「……だから、これが猫の王様から預かった短剣。これが猫の国の金貨。猫の国で貰ったお菓子もあるよ」  ニコラスは机の上に様々な戦利品を並べた。しかしその表情に余裕はない。机の向こう側では妖精の血を引く赤髪の娘が、額に青筋浮かべたまま笑顔を浮かべている。 「それで猫の国のみんなが、王様を連れて来てくれたお礼をしたいって言ってきて」 「で?」  半妖の娘は努めて冷静に、しかし容赦なく指摘した。 「それが、お礼なのね」  それ、という言葉と共にどれほどの感情が込められていたのかニコラスは考えたくはなかった。娘が指差す先には、淡いピンクのエプロンドレスを着た可憐な少女がニコラスの腕に抱きついて頬をすり寄せゴロゴロとのどを鳴らしている。 「猫の耳と尻尾がついているわね」 「あはははははは」 「なついているわね、すっかり」 「ははは、は……」  ニコラスが笑顔のまま凍りつく。 『にゃーん、お礼にたっぷりご奉仕しますにゃあん』 「ニーコーラースー!」  ああ、旅に出る前に命を落とすかもしれない。  薄れゆく意識の中でそんなことを考えたニコラスだった。めでたしめでたし。