『あつい日の話』  その日、セップ島は暑かった。  後に魔法使いたちが記したところによると、夏一番どころか十年ほどさかのぼって最も暑い日だったというのだから、それはもう大変な暑さだったのだ。  噂では、太陽の女神がどこぞの若者に惚れて地上に降り立ったのが原因とも。  それはともかくとして。  繰り返すようだが、その日はとても暑かった。とても暑かったのだ。  だから旅人のニコラスは、涼を得ようと湖に入った。  全裸で。 「どうしたのさ?」  噴出す鼻血を必死に押さえ湖岸でうずくまる耳なが王女を見て、不思議そうにニコラスは首を傾げたという。  後年、これが最大の好機であったと耳なが王女は悔やむ事になる。