『いと貴き娘』  あるところに貴族の娘がいた。  生まれてより着るものにも食べるものにも不自由したことのない彼女は、美しくそしてわがままな娘に育った。  美味い葡萄酒を飲みたいといえば畑ごと葡萄を育て、美味い魚を食べたいといえば港ごと魚を買い占めた。恋に憧れる年頃になれば美丈夫の騎士をはべらせ、その想いを詩に記した。  やがて娘が年頃になると、彼女は当たり前のようにこう考えた。 「とびきり素敵な夫と結ばれたい」  そうして行動に移そうとした娘は紫の雷に打たれ無数の魔物に身体を引き裂かれ、両親は地位と財産の全てを失ったという。